大久保宏明「ひとつの文を論理的に書く方法」
ひとつひとつの文が論理的な順序で並んでいれば、全体の文章はわかりやすい。
これは、ひとつの文の中でも有効な原理だ。
たとえば次のような文を考えよう。
私は、小説や詩で、意図的に話題を飛躍させて、あとで謎解きをすることで読者に強い印象を与えようとするテクニックが使われていることを指摘したい。
これはそんなにわかりにくい文ではない。
しかし、先頭の「私は」は最後の「指摘したい」が出てくるまで、解決されずに読者の記憶の中に保留されている。
また、「小説や詩で」は「使われている」が出てくるまで保留されている。
論理的な文というのは保留しなくていいということだから、これはまずい。
したがって、「私は」を「指摘したい」の直前に移動する。
また「小説や詩で」を「使われている」の直前に移動する。
すると、文は次のようになる。
意図的に話題を飛躍させて、あとで謎解きをすることで読者に強い印象を与えようとするテクニックが小説や詩で使われていることを、私は指摘したい。
さらにいえば、この「私は指摘したい」はなくてもかまわない。
このように、書き手がいま書いている内容について書くことを「メタ・ディスコース」と呼ぶ。
メタ・ディスコースが多くなると、文章は長くなり、わかりにくくなる。
この部分を削除してしまったらどうだろうか。
意図的に話題を飛躍させて、あとで謎解きをすることで読者に強い印象を与えようとするテクニックが小説や詩で使われている。
全く問題はない。
文は短くなり、より明確になった。
※大久保宏明=文章添削指導員
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